【書評】『十二国記 白銀の墟 玄の月』を読んで【後編】

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『十二国記 白銀の墟 玄の月』後編を読んで

こんにちはヤンヤンです。
今回紹介するのは、シリーズ累計1,000万部以上のベストセラー、小野不由美 著 十二国記・『白銀の墟 玄の月』です。

十二国記には全編を通しての主人公はいませんが、泰麒を主人公とした『風の海 迷宮の岸』『黄昏の岸 暁の天』に続く続編が18年振りに発売されました。
前回前半(第一巻と第二巻)のレビューをしました。

【書評】『十二国記 白銀の墟 玄の月』を読んで【前編】
積読していた十二国記『白銀の虚 玄の月』の一巻と二巻を読み終わたので、感想とか考察みたいなものを書いていこうと思います。 6年振りに泰国に戻った泰麒と李斎。偽王・阿選の失政で荒廃していた。突如姿を消した王を探し、民を救うため、泰麒は王宮へ!李斎は王失踪の地・文州へ!それぞれの戦いが始まる。 『風の海 迷宮の岸』『黄昏の岸 暁の天』に続く続編が18年振りに発売されました。

今回残りの後半(第三巻と第四巻)を読み終わったので、レビューをしたいと思います。

基本情報

第三巻
新書: 384ページ
出版社: 新潮社 (2019/11/9)
言語:日本語
ISBN: 4101240647
発売日: 2019/11/9
梱包サイズ: 10.6 x 1.5 x 15.1 cm
第四巻
新書: 448ページ
出版社: 新潮社 (2019/11/9)
言語:日本語
ISBN: 4101240655
発売日: 2019/11/9
梱包サイズ: 10.6 x 1.7 x 15.1 cm

著者プロフィール

小野不由美
大分県中津市生れ。
大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に在籍。
1988(昭和63)年、作家デビュー。
’91(平成3)年刊行の『魔性の子』に始まる『月の影 影の海』などの「十二国記」シリーズは、ファンタジー小説界に衝撃を与え、代表作となる。
2013年、『残穢』で山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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あらすじ

第三巻あらすじ
戴国に麒麟が還る。
新王践祚―角なき麒麟の決断は。李斎は、荒民らが怪我人を匿った里に辿り着く。だが、髪は白く眼は紅い男の命は、既に絶えていた。驍宗の臣であることを誇りとして、自らを支えた矜持は潰えたのか。そして、李斎の許を離れた泰麒は、妖魔によって病んだ傀儡が徘徊する王宮で、王を追い遣った真意を阿選に迫る。もはや慈悲深き生き物とは言い難い「麒麟」の深謀遠慮とは、如何に。
第四巻あらすじ
「助けてやれず、済まない…」男は、幼い麒麟に思いを馳せながら黒い獣を捕らえた。地の底で手にした沙包の鈴が助けになるとは。天の加護がその命を繋いだ歳月、泰麒は数奇な運命を生き、李斎もまた、汚名を着せられ追われた。それでも驍宗の無事を信じたのは、民に安寧が訪れるよう、あの豺虎を玉座から追い落とすため。―戴国の命運は、終焉か開幕か!

感想(ネタバレ含む)

これじゃない!×取れた小骨×残る謎

●これじゃない!
読み終わって一番の感想は「これで終わった!」そして「これで終わったのか?」です。

一応ハッピーエンドらしい感じで終わってますが、正直あまり納得はいってないです。
見たかったのはこれじゃない!
見たかったシーンを見事に上手くはぐらかされた気がしてます。
想像にお任せしますということなんでしょう。

ただ驍宗のこと、泰国のことは、長い間のどの奥に刺さった小骨のように感じていたので、なんにしても解決したことで安堵もしています。

●驍宗=半獣説!
じつは前半の二冊を読み終わって、後半の二冊を読む前に、出来心でネット検索してしまい、検索候補に「驍宗 半獣」って出てきて動揺してました。

驍宗が半獣かと驚きながらも、そうかも知れないと半ば納得してしまってました。

結果から言えば、驍宗は半獣ではなかったんですけど、四冊読み終わった今思うのは、なんなら半獣の方が盛り上がって良かったんじゃないかと思っています。

●宗教!
『白銀の虚 玄の月』には多くの宗教団体が出てくるのが印象的です。
瑞雲観(道観)、浮丘院(道観)、石林観(道観)、檀法寺(寺)です。

過去十二国記の世界で、こんなに宗教が前面に出てきたことがあったでしょうか?
全ての本を読んだわけではありませんが、自分の知る限りなかったのではないかと思います。

阿選の圧政で政治がグダグダになった泰国では、頼れるものは宗教ぐらいしかなかったのではないでしょうか。

もう一つ、宗教ではありませんが、宗教に良く似た「麾下」が出てきました。
麾下とは本来直属の部下という意味ですが、軍隊で長い間一緒にいるうちに、上官を個人崇拝するようになっていき、結果として宗教のようになってしまっています。

作中、阿選の民を虐げる命令に憤り、自分のしていることが間違っていると分かっていながら、命令だからと渋々従う阿選麾下の将帥が出てきます。

ある意味、驍宗麾下と阿選麾下の宗教戦争とも言えるかも知れません。

余談ですが、このブログのタイトルと名前の元にもなった『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーは、軍人の個人崇拝を否定していて、自分も賛同しています。

●『白銀の虚 玄の月』のここが不満!
見たかったのはこれじゃないと言いましたが、具体的な『白銀の虚 玄の月』の不満なところは、

・ご都合主義

読み進んでいて、これはご都合主義と言われてもしょうがないなというものがありました。
驍宗の発見の仕方や、泰麒の転変などです。
特に驍宗の発見の仕方はもっとドラマチックになるものと思ってたから、あまりのあっさりさに拍子抜けでした。

これは泰国で困窮した民衆を思って、天の采配が働いたとしか思えません。

・食べ物を流してる少女を放ったらかし

一巻から、時々ある家族が出てきます。
父親と、姉・兄・妹の4人家族で、名前も明らかにされていません。
死者への供養に、自分たちの食べる分を減らしてでも食べ物を川に流してる家族です。
しかも姉は後に餓死しています。

詳細は割愛しますが、この家族は最後報われて欲しかったし、その様子は見たかったですね。

ここも想像にお任せしますということなんでしょう。
残念です。

・驍宗の発見の仕方

驍宗の安否は長いこと気になってました。
だから驍宗の発見はとても嬉しかったです。
ただ驍宗の発見しかたは納得いかないんですよね。
詳しく割愛しますが、あっさりしすぎではないでしょうか。
もう少しドラマチックにならなかったのかと思います。
一番の見せ場が台無しです。

・驍宗と阿選が対峙しない!

結論から言えば、驍宗と阿選は対峙しませんでした。
文外ではしたかも知れませんが、作中そのような描写はありませんでした。

阿選がなぜ謀反をおこしたのか?
驍宗と阿選で対話して明らかにして欲しかったですね。

その上で阿選を倒して欲しかったです。

●まだ残る謎!
前回の謎は解明されました。
老安で死んだ武将は、基寮(きりょう)という李斎の同僚で、驍宗麾下の将帥でした。
また、宮殿を徘徊する魂魄を抜かれたような「病んだ官」は次蟾(じせん)という妖魔の仕業で、阿選が使役してました。

この様に、長い長い四冊全て読んだら、全ての謎が解明されるのではないかと思って、辛抱強く読みすすめてきましたが、残念ながら全てが解明されたわけではありませんでした。

・琅燦の正体

琅燦の正体は、結局分からず終いでした。

阿選謀反後、実権はないものの、王や台補の補佐や助言をする太師の職に就いています。
しかし琅燦は、阿選陣営に居ながら、一貫して驍宗派を自称していて、阿選すらそれをなぜか認めています。

また、その言動は不可解なものばかりですが、琅燦の発言を見ると、

琅燦

驍宗様のことは尊敬しているが、興味には勝てない。私はこの世界と王の関係にか興味があるんだ。何が起こればどうなるか、それを知りたい(三巻73ページ)

琅燦

やはりあの麒麟は化け物だ!

と言っています。

十二国記の世界で、麒麟と言えば金髪です。
それが泰麒は極めて珍しい黒髪の黒麒麟です。
しかも泰麒は、折伏は不可能とも言われてる最強級の妖魔・饕餮(とうてつ)を使令として使役しています。

マッドサイエンティストの琅燦の興味を引いても仕方ありません。
琅燦にとって、阿選に与したのはただの実験だったのかも知れません。

<マッドサイエンティスト>
主にSFにおいて「博士」や「ドクター」を名乗り科学知識や技術などを駆使する、常軌を逸した科学者として登場する。超絶的な頭脳を持つが、往々にして理解しがたい価値観や世界征服などとんでもない願望を持ち、周囲の迷惑は何も考えていない。悪役として描写される場合、より端的に「悪の科学者」、また「悪の天才」、「狂気の天才」といった形容詞が着く場合がある。事件を引き起こす役割として登場することが多い。

・耶利の主公

泰麒の用心棒・大僕の耶利。
その主公が誰のか結局はっきりとは言及されませんでした。

前編で、正忠の可能性にも言及しましたが、囚われの身ではその可能性は限りなくゼロと言えるでしょう。

一度は冢宰補の案作かも知れないとも思いましたが、やはり琅燦しかなさそうです。
泰麒も最後の方は琅燦ではないのかと、直接聞いてましたし、結局答えは得られませんでしたが…概ね当たっているんじゃないでしょうか。

後日出る短編に答えが出ること期待しましょう。

・玄管の正体

玄管とは、三巻で明らかにされ、石林観の淋雨に宮殿の様子を鳥で知らせてくれる人です。
正体は不明ですが、情報の正確性から、宮殿で高位の立場のある人ではないかと考えられています。
さて玄管の正体は誰なんでしょうか?
これも明らかにされませんでしたが、ヒントは耶利にあると思います。
一巻295ページの挿し絵で、耶利が鳥を放してる場面があります。

耶利が放した鳥にはその後言及されていません。
他にそれらしい記述がないので、これで決まりではないでしょうか。
ただ耶利が鳥好きなのを言いたかった訳ではないでしょう。

耶利本人じゃく、本来の主公が玄管かも知れません。
その場合、琅燦の可能性が高いです。

少なくとも耶利は玄管の関係者だと思います。

・阿選の気持ち

結局阿選の気持ちは明らかにされませんでした。
阿選は何がしたかったんでしょうか?

阿選はなぜ謀反を起こしたのかずっと気になっていました。
琅燦は嫉妬と決めつけているようでしたが、実際のところ阿選自身も分かってないのかも知れません。

阿選の謀反の理由は怨恨など、もっと深い理由があるんじゃないか長い間色々と推理して来たので、本当に嫉妬だとしたらガッカリです。

これも後日出る短編に答えが出ること期待しましょう。

まとめ

長い間、待ちに待ったものは見たいものではありませんでした。
決してつまらなかった訳ではありませんが、もう少しスカッとしてハッピーエンドを待っていたんですが、奥歯に何か挟まってような終わり方で、なんだかなぁという思いです。
逆に言えばいくらでも好きに想像できるので、良しとしましょう。

何にしても長年気になってた懸案が解決して安堵しています。
まだまだ明かされていない謎は有りますが、後日発表される短編に期待することにします。

とりあえず、急いで四冊読み進めたので、取りこぼしが有ったかも知れません。
2周目はゆっくり読みたいと思います。

おすすめする人、しない人

●こんな人におすすめです!

  • 十二国記が好きな人
  • 『風の海 迷宮の岸』『黄昏の岸 暁の天』を読んだことがある人
  • 辛抱強い人
●こんな人にはおすすめしません!

  • 『風の海 迷宮の岸』『黄昏の岸 暁の天』を読んだことがない人
  • せっかちな人



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