もくじ
【漫画】自殺島~死ねなければ、生きるしかない~【レビュー】
死ねなければ、生きるしかない!!
評価:
こんにちはヤンヤンです。
いつも見ていただいてありがとうございます。
マンガワンで期間限定で公開されてた森恒二著の漫画『自殺島』を読了したのでレビューしたいと思います。
この記事では、漫画の基本情報・あらすじ・感想などが書いてあります。
- 『自殺島』を「まだ読んだことない!」という人や、「読むかどうか迷ってるよ!」という人に向けて、判断の参考になればと考えています。
- また『自殺島』は「もう読んだよ!」という人とは、漫画の感想を共有できればと考えています。
記事を最後まで読んで貰えたらうれしいです。
基本情報
出版社: 白泉社
掲載誌:ヤングアニマル
2008年22号から2016年No.17まで連載。全17巻。
ASIN: 4592146212
※続編として、前日譚にあたる『無法島』がある。
著者プロフィール
森恒二
東京都出身の男性。
妻は漫画家のあっきう。
『ヤングアニマル』誌上で連載されていた『ホーリーランド』は人気作となり、テレビドラマ化もされる。
▼▼漫画を読んで疲れたあなたの目を優しくほぐす!▼▼
あらすじ
主人公・セイは自殺未遂を繰り返した末に、「生きる義務」を放棄した意思を示す書類にサインをする。
病院のベッドの上で意識を失ったセイは、目が覚めると自分がまだ生きており、知らない場所にいた。
そして周囲には、自分と同じ自殺未遂者らしき人が何人もいることに気付く。
その近くには看板があり、その前に人垣ができていた。
『あなた方は生きる権利と義務を放棄して本島にいます。
あなた方のIDは我が国で死亡という形で消滅しており、我が国におけるすべての権利をあなた方は有しておりません。
あなた方は我が国における義務や権利を遵守する必要はありません。
あなた方は本島及び周囲1km以内の海域において自由です。
あなた方は本島から周囲1KM以上の主変海域に侵入することはできません。
それ以上の海域は領海侵犯となり、それを侵犯した場合生命の保証は致しません。』日本国政府
看板を読んだ一同困惑する中、事情を知ってる者がいて、年々爆発的に増え続ける自殺者の医療費や社会復帰支援費用に国が耐えきれず、当事者の自由意思を尊重するという名目で切り捨てることにしたのだと言う。
そして、ここが自殺を繰り返す“常習指定者”が送り込まれる島「自殺島」であることを知る。
その直後、他の未遂者達が崖から飛び降り自殺をする瞬間と、死に損ねた者のおぞましい姿を目の当たりにし、一時自殺することを踏みとどまる。
“死ねなければ生きるしかない”
唐突に彼らのサバイバル生活が始まる。
数多の脱落者を出しながら、やがて未遂者たちは2つのグループに収束していく。
主人公・セイの居る山側グループと、カリスマリーダー・サワダ率いる海側グループの2つのグループへ。
やがてこの二つのグループは対立していき、のちに死者が出るほど激化していく…。
自殺島の世界観
- 大小2つの島からなる。
- 温暖な南の島らしい。
- 元々人が住んでいた跡があり、建物や道具など使える物も多い。
- 電気・ガス・水道のライフランは止まってる。
- バナナが自生している。
- 野生の鹿と猪がいる。
- 島で飼育されていたと思われる鶏が残っている。
- 小さい島の方には、元は家畜で野生化したヤギの群れがいる。
- 近海には魚が豊富に取れる。
- 島への出入りを見張っていて、島の外に出ようとすると、巡視船から銃撃される。
- 自殺島の存在は、政府によって隠蔽されているが、ネット上で噂として知られている。
主要登場人物
【山側グループ】
- セイ
- リヴ
- リョウ
- スギ
- リュウ
- ボウシ
- ミノル
- ナオ
- サワダ
- カイ
- トモ
本作の主人公。自殺未遂の常習者。背の低い青年で物語開始当初は19歳。
オーバードラッグとリストカットによる自殺未遂を繰り返し、「生きる義務」を放棄した「常習指定者」となる。その後、意識を取り戻した時、他の常習指定者達と共に自分が見知らぬ孤島に放置されていることに気付く。
学生時代の先輩から弓矢のことを教わり、試行錯誤の末、自作の弓矢を完成させる。その弓を使って狩猟をするようになり、それを通じて命の意味を再認識していくようになる。
常習指定者の1人。長い髪をした美しい女性で、セイが島で目覚めた際に近くにて、初めから強く意識するようになり、やがてセイと行動を共にするように。
本名は「マリア」だが、本土での辛い過去を思い出すため、セイが「リヴ」と名付ける。
(セイと同じくLive(生きる)が由来)。
未遂者とは思えぬ程活力に満ちた好青年。明るくて人懐こく正義感も強いことから、女性からの人気も高い。
早々にグループのリーダー格となり、皆を引っ張っていく。
かつて同棲していた恋人を交通事故で亡くしたことで自暴自棄になり、自殺を繰り返すが
それでも死ねなかったという過去を持つ。
自分の死に場所を自分で決めたいという思いから本土への帰還を望み自作の筏(いかだ)で有志と共に本土へ戻ろうと試みるが、哨戒していた巡視艇に筏(いかだ)を破壊さて以降一人心を閉ざすが、セイらの説得で再びグループに戻っていく。
仲間想いで、人を傷つけることを極端に嫌がり、港側のグループとの抗争が激化してきたことを機に、リーダーの座をリュウに譲る。
眼鏡をかけた青年。本名は「杉村(すぎむら)」。グループの中でも頭が良く、塩を採る際に塩田を提案したり、リョウが筏で本土へ戻ろうとしたときには自作の方位磁針を彼に渡すなど、知恵袋的な存在となる。自殺島のことを知っていた。
子供のころから人と接することが苦手で、大学を出た後「1人で幸せを得る」ために文筆業になることを志す。しかし、そこでも人とのコミュニケーション能力が必要であるという現実にぶつかり、自殺へと追い込まれていった。
本名は「リュウジ」。好戦的な性格で、過失ではあるが同じグループの人間をケンカの末に殺してしまったこともある。
港側のグループとの抗争が激しくなってきた際、争いを嫌ったリョウからリーダーを任される。
24歳の時、結婚を機に独立して従業員3人の小さな運送会社を立ち上げるが、不況のあおりで経営が傾き、他の従業員は辞めてしまう。
その後は寝る間も惜しんで業務の全てを1人で行ってきたが、居眠り運転で事故を起こし5人の死傷者を出してしまう。莫大な債務が残り妻からも離婚届が送られてきたリュウは、気力を無くし刑務所内で自殺未遂を3度繰り返した後、自殺島へと送り込まれることになった。
髪を長く伸ばし、常に帽子をかぶっている男性。自分の名前を嫌っているため、「ボウシ」と名乗っている。
人に誇れる物が何も無く、セイを「持たざる同志」と呼んでいた。他にできることが無いからという理由で農作業の手伝いをしていたが、やがて島での生活や狩猟採集に必要な道具を考案し作成することでグループに貢献していくようになる。
海側グループとの抗争が激化すると、グループの武装化のため盾や槍なども作製するように。
実家は農家で、経験を活かして農作業に従事する。本土にいた頃は、農作業に意味が見出せずに家を出たが、その後も生き甲斐になるようなことを見つけられなかったという過去を持つ。島に来てからは、作物を食べてくれる人たちと身近に接することが多くなったことに充足感を得るようになる。
サワダグループによる襲撃で重症負うが、作りかけの稲田が心配で、周囲の心配をよそに
田作りに精を出す。やがて日に日に弱っていき、ソファに座って皆に指示を出すだけになるが、稲田の完成を見届け、満足した顔で死んでいった。
元は海側グループに居たが、ある日山側グループに移って来て、そのことが両グループの対立の火種となる。島では食糧採取は一切行わず、売主婦として生きている。そのため男性からは好かれているが、女性からは嫌われいる。のちに未遂者で初めて出産する。
【海側グループ】
港側のグループのリーダー。島に来た初日に、セイ達と別れ何人かの者達と山の中に入っていき、その後の消息はしばらく不明となっていた。食料の確保を率先して行い他の面々を導くリーダーとなるが、やがて「暴君」となっていく。
大勢の女性を囲い、さらには人間の死体をも食べるようになり、そのためにグループに所属している人間達からはカリスマ視される一方で怖れられている。
ナオに執着し、自分のもとに連れ戻すよう、グループのメンバーに命じる
本土にいた頃は麻薬の売人で、自分で商品に手を付けてヤクザに追われる日々だった。
常習指定者の1人。セイが初めて自殺未遂をした後に送致された施設で出会った青年。セイより1歳年上で冷静な視点で物事を見据えている。
リョウと共にグループ初期の指導者となり、農作物による食糧の確保を目指すが、他のメンバーとは一線を引いた態度が多い。
しかしその本性は「人間という種族に生きる価値など無い」という歪な価値観の持ち主であり、悩みを抱える者に近付き、優しく接しながらも、絶望を煽るようなことを吹き込み、グループの人間を次々と自殺に追いやっていたことが判明する。
事が露見し、セイ達にグループを追い出されると、海側グループに加わる。
豊富な知識を生かし、サワダの軍師的な役割を担うようになる。
元々山側グループに居たが、抗争のさなか誘拐される形で、海側グループに移ってくる。
長い髪を後ろで束ねている青年で、過去に沖縄で暮らしていたことがあるらしく、野生の植物に詳しい。
小さな街の医者の家に生まれ、両親と妹がいるごく普通の家庭に育った。しかし、中学生になった頃から自分が性同一性障害であることに気付き、悩んでいた。隠し持っていた女物の服が見つかったことを機にそのことを告白してみたものの、父親からは理解されず「化け物」呼ばわりされる。父親は障害を無理矢理矯正しようと試み、このことが原因で家庭崩壊していった。
セイとは仲が良く、そのためセイの怒りのトリガーになっている。
感想(ネタバレ含む)
サバイバル×イライラ×生きる意味を考える
死ねなければ、生きるしかない
文句を言いながらも何だかんだで最後まで読んでしまいました。
終って見れば良いマンガだったかのもしれません。
読み終わってまず思ったのは、「生きるって大変だな」でした。
全編を通して「生きる意味」を問いかけられてる気がするんですけど、正直分からなかったです。
とにかく生きるって大変だなって思いました。
ゼロから始まるサバイバル術がためになる
いきなり無人島に放り出された未遂者たち。
政府から「そんなに死にたいならもう死んで良いよ」と言われたものの、死に方ぐらい選びたいと、とりあえず生きることを選びます。
住居や道具など残ってはいるものの、ライフランは止まっているので、全て自分たちで賄わないといけません。
昼飯は自生してるバナナ一本だけのことも。
しかも、そのバナナ一本をめぐって殺人が起こるほど。
食糧の確保が第一の優先課題です。
- 定置網漁
- 追い込み漁
- 塩田
- 虫食
- 燻製
- 稲作
などを試行錯誤で試していき、始めの原始時代のような狩猟採集から弥生時代のような生活にアップグレードしていきます。
作中、実際に試した作者の捕捉が入るので、サバイバル教本としても使えるのではないでしょうか。
決断のできなさにイライラ
無人島生活もやがて、多くの脱落者を出しながら、主人公たちのいる山側のグループと、海側のグループの二つのグループに収束していきます。
そして二つのグループは、やがて戦争とも言える激しい対立に発展していきます。
元々自殺するぐらいメンタル豆腐みたいな人間の集まりなので、基本的グズグズしてて、その決断の出来なさにイライラしてしまいます。
特に、既に死人が出るぐらい争いが激化しているというのに、相変わらずリョウの覚悟のなさにはイライラします。
他人を気づ付けたくないというリョウの気持ちも分からなくはないですが、結局そのせいで無駄な犠牲を増やしてしまってはしょうがないですね。
中途半端な平和主義がかえって事態を悪化させるという教科書のような展開。
とにかく戦争が下手すぎる。
結構な人数いるのに、囲碁や将棋、戦略シミュレーションとかしたことある人いないんですかね。
逆に敵本拠地の奪取をやり遂げた海側グループの采配には痺れました。
再生物語
いきなりサバイバル生活に投げ出された自殺未遂者たち。
「生きるのも自由。死ぬのも自由。その上で生きたいものは協力しよう!」
と始まった狩猟採集生活。
まるで鶏鳴狗盗の四字熟語のように、それぞれが持ち前の技能を寄せ合って協力していきます。。
(けいめいくとう)は「くだらない技能をもつ人やつまらないことしかできない人のたとえ」、そこから転じて「つまらないことでも何かの役に立つことがあるたとえ」という意味です。
グループ内で自分の役割を見つけ、自信も付いていきます。
特に主人公・セイの成長はめざましいです。
元々持っていた弓の知識を生かし、自ら弓を作って、野生の鹿を狩り、自ら捌くシーンは胸が熱くなりました。
漁が中心で、食糧の安定的確保が不安なグループに、肉をもたらします。
また実家が農家のミノルは稲田づくりを、ボウシは生活に必要な道具の制作、のちに武器や防具の制作でグループに貢献していきます。
しかし一方で、変化に対応できず、落ちこぼれていった未遂者も数知れずいます。
その差は些細なものだったのかも知れません。
むかし「自分探し」なんてものが流行ってましたけど、案外人間ってたくさんの顔を持っていて、人によって見せる顔を変えるモノじゃないですか。
テレビでおしゃべりでひょうきんな姿を見せる人気芸人も、カメラが止まったら一言もしゃべらないと聞きます。
優秀な営業マンやサービス業の人も、家では全然しゃべらないとか良く聞きます。
性格や態度って本人は無自覚かも知れないですけど、結構変えてるものなんですよね。
いついかなる時にも確固たる自分が存在するなんてものはないのだから、自分が一番楽でいられる他人を探した方が良いんです。
『銀河英雄伝説』の登場人物・バグダッシュの「主義主張なんて生きるための方便」と言うぐらいが、正しい生き方のスタンスなのかも知れません。
弱肉強食
守るものが何もない無人島で「生きる」とは弱肉強食の世界です。
- 鹿
- 猪
- サメ
- 人(サワダグループ)
などたくさんの戦いがありますが、最後の人と戦いが一番激しくて、救いがありません。
表現がエグイ
一部、表現が過激な部分があります。
PTAが読んだら卒倒しそうですね。
あらためて、読む人を選ぶ漫画だと言えます。
不満な所
不満な所。
- 絵があまり上手くなく、キャラクターの見分けが付き辛い。
- 主要登場人物のリョウとリュウが紛らわしい。
- 同じようなことを繰り返してる。
まとめ
文句を言いながらも何だかんだで最後まで読んでしまいました。
この漫画は、経費削減のため、国に無人島に閉じ込められた自殺常習者たちが、島でのサバイバル生活を通して、生きる意味を考える作品になっています。
もし自分が極限の状態に投げ出されたらと色々と考えさせられる良い機会になりました。
表現はエグいし、設定もかなりブっ飛んでますが、作者の豊富な知識に基づいたサバイバル術がリアルティを演出してて、細かい不満もなくはないですが、概ね良かったんじゃないかと思います。
途中まではボウシに感情を移入してましたが、後半はボウシ無双で良い意味で唖然としてしいました。
結局生きる意味は分からずじまいでしたが、「積極的に死ぬ理由がないから」程度のモノで良いなのかも知れないですね。
おすすめする人、しない人
- サバイバルに興味がある人
- 過激な表現(エログロ)に耐性がある人
- 辛抱強い人
- 暴力的な表現が苦手な人
- 卑猥表現が苦手な人
- せっかちな人
記事を最後まで読んでくれてありがとうございます。
記事を読んだ感想など、なんでも良いのでコメントを残してもらえるとうれいしです。
それでは以上になります。
チャオ!
▼▼国に見放された自殺常習者たち!無人島で生きる意味を探す!!▼▼
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